昼食後は比較的得意な理科と社会。

国語、算数に比べて、余裕をもって挑む事が出来た。

特に理科は上出来で、100問以上の問題の中で、答えが不安なのは3問くらいしかなかった。



面接も思ったより簡単なもの。




試験は、終わってから考えるとあっという間で、今まで頑張ったなぁ、としみじみ思った。


後は結果を待つのみ。


この教室にまた会えるか会えないか。そんなことを考えながら廊下に出た。


終わったんだなぁ…。この一瞬の為に半年頑張って来たのか…。


靴を履き替えようと、下駄箱に行くと、戸谷君が壁に凭れ立っていた。



通りすがりの人達は、必ず戸谷君を一目見る。

同学年の子達が「カッコいい」等と囁いても、当の本人は全く気付かない。



あたしが戸谷君の前に行くと、「待ってました」というような感じで、戸谷君は壁から離れた。


「これ渡そうと思って。」

近付いてきた戸谷君が差し出したのは、黄緑色のプリント。

「坂田先生から。明日って。」

プリントには、合格者で打ち上げをする、と書いてあった。
といっても二人だけだが。
参加出来るのは合格者のみ。通知が来るのは明日。つまり試験に落ちていたら



明日塾に行く必要はない。






あたしは唾を飲んだ。
明日、戸谷君と塾で会いたい。ドキドキしている胸の中で、心の中のあたしが祈り続ける。



「とりあえず、お疲れ様。」
話題が見つからなかったので、あたしは笑顔で戸谷君に言った。
戸谷君は小さく頷く。
「明日……行きたいね。」
戸谷君はまた小さく頷いた。
そしてまた二人共黙り込む。
その時校門の前に銀色のベンツが登場した。

戸谷君は無言のままあたしに背を向ける。

「バイバイ!!」

このまま別れるのが嫌で、あたしは後ろ姿の戸谷君に向かって叫んだ。
戸谷君は振り向いて、「また明日。」と言ってくれた。



その一言でまた





安心した。





不安が消えていく感じがした。