そんな中、珍しく戸谷君からあたしに話しかけてきた。
「お前って、負けず嫌い。」

語尾が上がっているのか下がっているのか分からない口調。あたしが「それ、聞いてるの?」と尋ねると、戸谷君は小さく頷いた。

「まぁ、よく言われるね。」

あたしが答えると、戸谷君は「じゃぁ少し違うな」と小さい声で言った。


「…何と違うの?」
あたしが聞くと、戸谷君はペンを止めて呟いた。
「いや…独り言。」
秘密が多いのは今に始まったことじゃない。
受験が終わったら全部聞こう。
そう決めて、あたしは我慢した。


そしてまた話題を探す。

「あ…明日…」
窓の横にある日めくりカレンダーを見て、不意に声が出た。
「明日…超ビッグイベントじゃん…。」
もしかして戸谷君は…
「明日、ちゃんと来る?」
心配になって聞いてみる。
もしかすると予定が入ってるのではないか…という予感が頭を過ぎったから。

沈黙の後戸谷君が頭を上げた。