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「これは…何?」
「過去問。」


冬期講習1日目。
教室に入ると、過去問に埋もれた戸谷君がいた。

でも戸谷君は焦ることなく、いつものポーカーフェイスで過去問を解こうとしている。

「一体何年分よ?」
「…一番古いのが平成3年…」
つまり、10年分を裕に超える。

先生がいないかわりに、黒板には、"冬期講習最終日に採点"と書かれていた。
冬期講習の間にやり終えろ…、と言う事か。

あたしは席につき、一番古い過去問集を開いた。

「ねぇ、どっちが早く終わるか、勝負しよ。」
折角の冬期講習に無言でペンを走らせ続けるのは虚しいので、あたしは提案した。

「……別に良いけど。」
「やたっ!!」
思った通り、戸谷君はやる気の無さそうな表情でオーケーしてくれた。




それから、争い混じりの競争が始まった。
「あたしの方が早いもんねー!!」
「……お前2枚目飛ばしてんぞ。」
「……あ゚ぁぁぁ―――!!!」

しょっちゅうあたしは奇声を発する。
戸谷君は競争など特に気にする事なく解いている。
何か懸けとけば良かった、と後で思った。



学校が終業式を迎えるまでは、学校から直接塾に行った。
速く行かないと負けるから。


いや、違う…




早く戸谷君に会いたいから。