呆気なく終わった電話。
初の電話として喜んで良いのか。
複雑な感じだったが、素直に喜ぶことにした。
「お母さーん、明日塾だからー。」
そう報告し、鼻歌を歌いながら二階に駈け登る。
明日から毎日戸谷君に会える。
学校が違うあたしにとっては、とても嬉しいことだった。
何でここまで戸谷君といたいと思う様になったのだろう。
戸谷君とは何ごともなく、ただ塾で一緒に勉強してきただけなのに。自分でも疑問に感じる時がある。
しかし、
「理由なんて、いらないよね。」
いつしかそう考えるようになった。
でもそれは、紛れもない事実。
人を好きになって理由を言え、と言われて一つの理由を答えても、「それだけの理由か」と流されるかもしれない。
でも、一緒にいる間に出来た、言葉では表せないこの感情は、理由なんかより確かなもので。
「理由なんていらない」。
適当に聞こえるけど、本当は言葉には表せない程の気持ち。

