綺麗なピンク色の石のついた指輪が、わたしの指に。
まるで夢のようで現実感がない。
「少し揺れるぞ?」
「はい?きゃ、」
ボーッとしていたときに聞こえたシリル様の声に顔をあげると、ふわ、と体が浮いた。
思わずシリル様の服に手をかける。
「父上、母上。婚約者は決まりました。
私はお先に失礼します」
淀みなくそう言ってシリル様はホールの扉に向かうけれど。
こ、これはいいのかしら?
だってこの舞踏会はシリル様のために開かれたものなのに……
どうしてよいのか分からず、わたしは助けを求めて目線を向ける。
わたしの視界に最後に映ったのは、アレン様とシェイリー様の満面の笑顔だった。
いいのですか、この状況は……?
そのまま口を開くこともできず、わたしはただシリル様に抱きかかえられていて。
向かった先は見覚えのあるシリル様の部屋。
わたしはふわり、とベッドの上におろされた。
「あ、の……」
「ん?」
スルリ、とわたしの頬をシリル様の指がなぞる。
カアァ、と体の熱が上がって。
気恥ずかしくてつい視線をウロウロとさ迷わせてしまう。
「ローズ、私を見てはくれないのか?」
クスリ、と楽しそうに笑みをこぼすシリル様に胸がギュッと苦しくなる。
「す、すみません…なんだか、実感がなくてですね、恥ずかしくて……」
あぁ、もう言葉で表すのは少し難しい。
でも、嫌な感情ではないんです。
むしろ嬉しい感情で……
「実感、か……私もだ」
「え?」
ここにきて初めて、わたしはシリル様の顔を真っ直ぐに見つめた。
月明かりでシリル様の淡い金色の髪が煌めく。


