「ローズ、貴女にはまだ、これは飲ませられないよ」
「え……」
どうして、ここに……
驚いて一瞬力が抜ける。
その隙をついたようにグラスが手から離れ、代わりに温かいものに包まれた。
ゆっくりと手を引かれ、キール様や他の男性の輪から抜ける。
「え、あ、あのっ」
「ローズ、少しだけ静かに」
「で、でも……」
どうして?
どうしてシリル様が……?
こんなことをしてしまえば、リリアス様や他の姫君に誤解させてしまうかもしれないのに……
歩いていくシリル様の後ろを歩き、気づけばホールの中央に来ていた。
「あ、あの……」
どうしてこんな目立つところに?
この状況の意味が分かっていないわたしは、不安からシリル様を見上げる。
「ローズ」
ホールに響くシリル様の声に、心が震える。
真剣な光を灯す美しい紫の瞳に、わたしが映っていた。
スッと方膝をつくシリル様を見て唖然としてしまう。
「ななな、なにを、シリルさ、」
「ローズ」
ぎゅっ、と繋いだ手の力が強まり、ビクッと体が揺れる。
「愛してる」
「……え、」
今、なんて……?
茫然とするわたしに再び聞かせるように、シリル様は口を開いた。
「私は貴女を、愛している」
真剣な瞳は、揺るぎなくわたしを見つめている。
シリル様が、わたしを……?
嘘だと、冗談だと言いたいのに、そんな瞳を向けられたら疑うことなんてできなくて。
え、だとしたら本当に……?
そう思った途端、カアァッと体が熱くなって。
視界でさえぼやけてくる。


