一番初めにわたしの目に入ったのは、光輝くシャンデリア。
着飾った人々がときには笑いながら話をしている。
「すごいわ……」
ど、どうしましょう。
場の雰囲気に流されてしまいそうだわ。
と、とにかくおどおどしていると逆に目立ってしまう、とシェイリー様も言っていたし。
真っ直ぐと前を見ながら歩いていると、だんだんと心が落ち着いてきた。
周りを見る余裕も出てきて。
せっかくなので食べ物でも頂こうかしら、と考えていると、こんばんは、と話しかけられた。
「あ、こ、こんばんは……」
赤みがかった茶色の髪に煌めくシルバーの瞳。
全体的に甘めに整った綺麗な顔。
目元にある黒子がなんだか色っぽく感じてしまう。
「初めて見る顔だね」
「は、はい。舞踏会はこれが初めてで……」
「そうなんだ」
この方……どこかで見たことがあるような気がするわ。
どこだったかしら……?
「おっと。自己紹介がまだだったね。
僕はキール・アルモンド」
その名前に思わず声を上げそうになったけれど、なんとか目を見張るだけにとどめる。
あぁ、わたしの馬鹿……
見たことがあるはずだわ。
キール様と言えば、この国でも有名な名のある伯爵家の嫡男だもの。
何度かお城でも目にしたことがあるわ。
自分の間抜けぶりと、そんな身分の高い人に話しかけられた衝撃を受けらながらも、粗相をしてはいけないと自分を叱咤する。
「初めましてキール様。わたしはローズと言います」
できるだけ上品に膝を折りドレスの裾を摘まんでお辞儀をする。
最後に少し笑顔を浮かべてキール様を見上げると、ほんのりとキール様の顔が色づいていて。
「あの、大丈夫でしょうか?お顔が少し赤いようですけど……」
ワインに酔ってしまったのかしら?


