「あ、あの、シェイリー様……?」
「なぁに?」
にっこりと笑顔を浮かべたシェイリー様につい口ごもってしまう。
……いいえ、ローズ。ここで怯んではダメだわ。
だって、これはダメだもの。
わたしは庭師で、身分なんてなくて。
なのに……
「どうして、わたしはこんなところにいるのでしょう……?」
「うふふふっ」
シェイリー様、笑い事ではありません。
思わずため息が出そうになる。
今日は、待ちに待ったシリル様のご婚約の舞踏会のある日。
今夜の舞踏会で、シリル様の将来の伴侶が決まる。
たくさんの国々の方たちがこのお城にくる日でもあり、わたしにとっては腕の見せどころ。
昨日も見回ったけれど、一応今日も見てこようかしら、と思い支度をしていると。
不意にノックが聞こえてきて。
「こんなに朝早くから誰かしら……」
滅多にここにくる人なんていないのに。
扉を開けてきて思わず目を丸くしてしまった。
「おはよう、ローズ」
「シェ、シェイリー様、おはようございます…
あの、どうしてここに?」
「準備のためよ」
「準備?」
首を傾げるわたしにシェイリー様はにっこりと魅力的に笑って。
その後ろから顔馴染みであるシェイリー様の侍女が出てくる。
そして、
「……え?」
ガシッと両腕を掴まれた。
思考が停止した中、シェイリー様はわたしを見て笑い。
わたしはシェイリー様に連れられて、何故か今の状況に。
「これもいいわね。あっ、これも似合うわよ」
「あ、あの、」
「あら、でもこっちかしら?でもこの色も……」
「……」
「あぁ、やっぱり若いっていいわね!
どのドレスもローズに似合うわよ」
「……ありがとうございます」