わたしは思わず視線を落とす。
きっと、リリアス様で決まっているわ。
何度かお二人でいたところを見かけたし……
遠くから見ていて、羨ましいぐらいにお二人はお似合いだった。
わたしがあの場所に立つなんて……
叶わない夢を見るのはやめなければ。
ちゃんと、忘れなければ……
「ローズ、聞いている?」
「ぇ、あっ!すみません……」
あぁ、シリル様のことを考えすぎて、シェイリー様の言葉を聞き逃すなんて。
自分を怒りたいわ。
「だから、シリルももう結婚するのだし、ローズもそろそろ相応しい人を探してもいいのではないかしら?」
「、え……?」
思わず目を見張る。
つまり、わたしに縁談……?
「かわいい娘には幸せになってほしいの。
ローズが嫌だと思うのなら強制はしないわ。
でも少し考えて、」
「……ます」
「?」
キョトン、としたシェイリー様の瞳をわたしは見つめ返す。
「します。わたしも、結婚……したいです」
卑怯、かもしれない。
いいえ、確実に卑怯だわ。
でも、わたしが結婚すれば、シリル様へのこの想いを断ち切ることができるかもしれない。
忘れることが、できるかもしれない……
「まぁ!本当にいいの?」
「はい」
頷くとシェイリー様は嬉しそうに微笑んだ。
「相手は任せてね。大事な娘を預ける相手だもの。
ローズに相応しい人を探してくるわ!」
「、ありがとうございます」
シェイリー様の笑顔につられて、わたしの顔にも笑顔が浮かぶ。
「ふふ、楽しみねぇ」
にっこり笑ってそう言ったとき、コンコン、というノックがして扉が開いた。