「、え……」



思わず目を見開くわたしに、シリル様はふわりと笑みを浮かべた。


ドキン、と胸が音をたてる。


カアァッと体が中心から熱くなったように感じた。



「あ、ぇと、えっ?」



い、今何が?


シシ、シリル様の唇が、わたしの……?


あたふたと慌てるわたしに、シリル様はクスクスと静かに笑っていて。



「わ、笑わないで下さい……」



も、もともとシリル様があんなこと……



「あぁ、すまないね。つい」



あぁ、つい、でそんなことをしないでほしい。


きっとシリル様にとっては、猫や犬に対してスキンシップをするのと同じ感覚なんだろうけれど。


でも、それでもわたしにとってはそうではなくて。


不思議と、ドキドキしてしまって。



心臓が、痛い。




「そうだ。さっき母上にローズのことを伝えてきた。
多分もうすぐで……」



シリル様が言い終わる前に、バタンと大きな音をたてて扉が開いた。



「シェイリー様……」



はぁ、はぁ、と息を切らしてそこにいるシェイリー様。


わたしの姿を見ると泣きそうに眉を下げて、飛び込んできた。



「きゃっ、シェ、シェイリー様……」


「ローズっ、よかったわ、貴女が無事で……
アレンもすごく心配していたのよっ?」



涙を隠しもせずに、ぎゅうぎゅうとわたしを抱きしめるシェイリー様に、胸が締め付けられるように感じた。



あぁ、こんなにも心配をさせてしまって、涙まで流させてしまった。


わたしはアレン様やシェイリー様に笑顔でいてほしいのに。



「すみません……」



しゅん、としてしまうわたしにシェイリー様は優しく微笑んだ。



「いいのよ。ローズは無事だったのだから。
でもこれからはこんな危険なことはしないでね」


「はい」



素直に頷くと、シェイリー様はホッとしたように顔を穏やかにさせて。


しばらく話をしてからシェイリー様は部屋から出た。


その間、シリル様は静かに笑みを浮かべながらわたしたちを見ていた。