あの日……シリル様と一緒にお茶をした日から、わたしとシリル様はよく話をするようになった。
と言ってもわたしから話かけるなんて畏れ多くて。
だいたいシリル様がわたしを見かけたときに、ほんの少し話すぐらい。
時間があったり、シリル様に誘われて軽くお茶をすることもあるけれど……
今もシリル様に誘われてわたしとシリル様はマカライト広場に来ていた。
なんでも今日はわたしに相談したいことがあるらしく。
でも、シリル様からの相談事なんて、わたしなんかが聞いてもいいのかしら。
それは、まぁ……頼られていることは素直に嬉しくはあるのだけど。
シリル様はあまり気にしてはいないようだけれど、やっぱりそうもいかないわよね。
頭の中でぼんやりとそんなことを考える。
「……ローズ?」
「はい?」
名前に反応して顔を上げると、不思議そうな顔をしたシリル様がわたしを見ていた。
いけないっ……
自分の思考に気をとられてシリル様の話を聞いていなかったわ。
「す、すみませんっ……」
あぁ……わたし、なんてことを……っ
決まりが悪いやら恥ずかしいやらで顔が少し熱を帯びる。
「いいや、気にしていないよ」
だから顔を上げて、というシリル様の優しさが見に染みる。
ま、ますます申し訳ありません……
「実は相談事のことなんだが……」
わたしはその言葉に少し目を見張る。
「花束、ですか?」
「あぁ。ここの薔薇は美しいから、できたらと思ったのだが……やっぱり駄目だったかい?」
困ったように眉を下げるシリル様に、わたしは慌てて首を振る。
「いえ!そんな……駄目だなんて」
そもそもここの薔薇はわたしのものではなくて、この城のもの。
つまりは現国王夫婦の所有物であって……
わたしがあれこれ言う資格なんてないのに。