現実を受け入れることができず、ただ日々を過ごすわたしを、アレン様もシェイリー様も気にかけてくれた。


何も反応を見せない人形のようなわたしに、アレン様は毎日話しかけてくれた。


ある日突然泣きじゃくり始めたわたしを、シェイリー様はただ抱き締めてくれた。


そんな二人の優しさに触れて、わたしは立ち直ることができた。


その恩を返したくて、わたしはこの力をアレン様たちのために使おうと思った。


庭師として、この城の薔薇を枯らさずに美しく咲かせる。


そして少しでも、辛いことや悲しいことがあったら薔薇を見て癒されてほしい。


それがわたしにできる二人への恩返しだと思った。











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「だからわたしはこの城で、九年間、庭師として働いているんです」


「そうだったのか……」



長い間話していたせいか、お茶はすっかり冷めている。



「すみません、こんな暗い話をしてしまって……」


「いや、聞きたいと言ったのは私だからな」



でも、やっぱりそんな悲しそうな顔をさせてしまったことが申し訳なくて。


シリル様が優しい方だって分かっていたのに……


本当に気の回らない自分に嫌気がさしてしまう。



「ローズ……貴方は強い人だ」


「……え?」



いきなりの発言にわたしは首を傾げる。



「幼いながらに、きちんと前を向いて生きることは難しい。

それにも関わらず、貴方は自分で自分の道を決めた。自分の意志で」


「そんな……大げさです」



ゆるゆるとわたしは頭を振る。


だって、わたしがそういう風に思えるようになったのはアレン様たちがいたからだから。


一人ではきっと、立つことだってできなかった……



「それでも、貴方は強く…優しい人だ」



柔らかな紫の光に、トクンとわたしの心の音が響く。


ふわりと、薔薇の甘い香りがわたしたちの間を掠めていった。