-桃花 side-
─コツ、コツ、コツ、コツ
私は、地下室からホールへと向かって歩いていた。
私の素顔を見たことのない人が多いせいか、たくさんの視線を注がれる。
「─あのっ!」
突然声をかけられて振り向くと、そこにいたのは、ときどき一緒買い出しに行く、“ナナ”と呼ばれる少女だった。
「もしかして……桃花様、ですか?」
「えぇ。貴女たちに素顔を見せるのは初めてよね。びっくりさせてしまってごめんなさい。」
私がそう謝ると、ナナはぶんぶんと顔を横に振って言った。
「いえっ!
こちらこそ、桃花様がここまで綺麗だと思っていなくて……
って、ブスって思ってた訳じゃなくて!なんていうか」
あまりにナナがオロオロしているから、少し面白くなってしまった。
「ふふっ。別に気にしてないから大丈夫よ。
それじゃあ、大事な会議があるから行くわね。」
「あ!はいっ‼
引き止めちゃってごめんなさい!」
そう言った彼女は、深々と頭を下げて、パタパタと走り去って行った。
さて、と。
私もまた、ホールに向けて歩き出した。

