【短編】君のことが好きだから

退院して陸上部に戻ってきたものの、
リレーのアンカーは他の子にとられていた。

私は負けじと、走ろうとする。
しかし、右足に痛みが……。


そんな現実が続いて、ネガティブになる毎日。


楽しかった日々が愛おしい……。


楽しいことなんか、なーんにもなくって
笑うことがなくなってきて。

登下校も1人に。
笑わない私がいても、友達に迷惑だもんね。


今日の下校も1人。

とぼとぼと見慣れた道を歩く私。


数週間前の私はこの道を、友達と色んなこと話して笑いながら歩いてたな……。

ぼーっと歩いていると


トントン。

肩を叩かれた気がしたから振り返る。

その瞬間に、頬を人差し指でつっつかれた。

「ひっかかった」

そう言ったのは、亮斗先輩。


かぁぁぁぁ……///


顔があつくなる。


意地悪な先輩。

でも、そこが好き。


そして2人でしばらく歩く。

「今日は、他の方と帰らないんですか?」

私が訪ねると

「うーん。別にいいやー」

テキトーな返事をする先輩。

「私なんかと帰っても、つまんないですよ」

「それはねーだろ」

「だって、笑わないし」

「だったら俺が笑わせるよ」

「えっ?」

私が亮斗先輩の方を向いた瞬間、亮斗先輩は変顔をした。

「クスッ…」

不覚にも笑ってしまった。

「ほら、笑った♪」

「亮斗先輩が変顔するからですっ」