私は、走り終わったばかりの先輩にかけよる。

「亮斗先輩、またタイムあがってます!」

亮斗先輩は、息をきらしながら
「ホント?」と言った。

亮斗先輩の走り終わったばかりの表情はやわらかくて、優しげで……。

ますます好きになっちゃう。

「この調子だと県大会出れますよ!」

ちょっと冗談を言ってみる。

「いやー、それは無理だよー!萌音ちゃんも頑張って!」

亮斗先輩は相変わらずの笑顔だ。

「………はいっ。でも、もう無理なんです」

私は先輩の笑顔と対象的にうつむきがちで言った。


私が無理だと言っている理由。


それは、1ヶ月前のことだった……。