「萌音ちゃん、今暇?」

声がしたので、私は上を見る。


目があったのは……

カッコよくて、足が速くて。


私の……好きな先輩。


亮斗先輩。

背が高くて、優しくて、でも意地悪。
そんなとこが好きなの。

「はい、暇ですよ!」

私は笑顔で言う。

「100m走るから、タイムはかってくれない?」

「了解です」

「準備できたら手あげて。あっ、ゆっくり準備してて大丈夫だから!宜しくね、じゃっ!」

そして、亮斗先輩は手を振ってスタート地点へ向かっていった。


“ゆっくり準備してて大丈夫だから!”


そんな先輩の些細な気遣いに惚れてしまう。

私もゴール地点へ向かう。