【短編】君のことが好きだから






それから私は、辛いことがあったら
亮斗先輩に話すようにした。

そしたら、だんだん元気になってきたの。
走れないけど、それでも部活が楽しいと思えるようになってきた。



そして、今に至る。





「諦めるのって、チョー簡単だけどさ、後悔するよ」

亮斗先輩が言う。

「私は、もう二度と大会に出れることはないんです」

「あるんじゃない?」
亮斗先輩は続けて
「高飛び……とか」


高飛び………。


「走る距離も短いし、萌音ちゃん体柔らかいからさっ!似合うと思う!」

「高飛びかぁ〜!」

私の顔がぱぁぁっと明るくなる。

「俺がコーチに相談しとくよ☆」

と言って亮斗先輩が走り去りそうな時、
「待ってくださいっ」

私が言った。

亮斗先輩がびっくりした顔で振り返る。

「私、自分で言います!いっつも亮斗先輩に支えられて、私は何もできていないので!」

亮斗先輩は、初めはびっくりしてたけどまたいつもの優しい表情になって

「OK!」

と言った。


私が歩こうとした時

「そういうとこ、好きだよ」

「えっ?なんか言いました?」

なんか言ったような気がしたんだけどなぁー。

「ううん、なーんにもっ」

「あ、はいっ」

私はそのまま歩いてコーチの方へ向かった。


私がコーチと話しているところを遠くから見て、亮斗先輩は
「いつか両想いになれるかな」
と呟いた。




☆END☆