「おはようございます」


「ああ、おはよう」

ユリウスは安堵で緩んだ顔を素早く元に戻し、平然を装う。


「昨晩、彼女が蒲団に潜りこんでいて、起こすのも可哀想で……お陰か、とても暖かかったです」

詩月は素直ではないなと思い、わざとアイドルスマイルで言ってみる。


「君のベッドに!?」


「ええ、良い子に寝てましたよ」


マルグリットが、ユリウスをちらと見て、「恋敵ね」フフッと笑う。

ブルーム、日本語で「花」と名付けられた子猫。

ユリウスの子猫を撫でる仕草から、ユリウスが如何に大事にしているかがわかる。

ユリウスは不機嫌そうな顔で「今日の予定は?」と訊ねる。


「マイスター、ジョルジュと楽団の契約に、10時にザッハホテル」


「そうか、調子はどうなんだ!?」


「課題曲なら問題ありません」