午後4時過ぎ。
郁子のスマホにメール。


――Nun, in Ordnung ・ber das Telefon?
今、電話掛けて大丈夫?


ドイツ語に、丁寧に日本語を添えてある。


講義が終了していることを見計らってのメール。


――大丈夫、話せるよ


郁子は逸る気持ちを抑え、返信する。


折り返し、着信音が鳴る。


郁子は急ぎ、スマホを操作し電話をとる。



――Ogata, war es leid. Tags・ber ist willk・rlich ...... Freund von Violinfamilie



「周桜くん、ちょっちょっと待って! 日本語でお願い」


郁子は慌てて詩月のドイツ語を遮る。


――あっ……緒方、すまない。昼間はヴァイオリン科の友人が、勝手にスマホを……


「そのおかげで、こうして話せてるから、感謝しなきゃ」


――……その、なかなか返信できなくて、時差とか、タイミングとか考えたら……その……