その横で貢が手際よく、給仕を手伝っている。


「もうすぐ、郁子も来る頃だ」


「そう、きっと緊張してる」


「だな、お前はほろ酔いで弾くだろうって言ってある」


「理久!?」

マルグリットがカウンター前でパソコン画面に向かって話す詩月に、そっとワイングラスを差し出す。

詩月は静かに笑ってこたえ、ワイングラスを指ではじく。


「余裕だろ」


「まあね、緒方の元気な音が聴きたいんだ」

詩月は穏やかに、小さく声を出し笑って呟く。