2人の会話を余所に、マスターとミヒャエルがカウンターの客も巻き込み、あたふたしている。

ネット回線で繋げたテレビ電話に、アダプターで接続したホリゾント幕。

カフェ・モルダウの様子が映し出される。


「詩月! 横浜……日本語が何言ってるかわからない」

ミヒャエルがカウンター前から、詩月に向かって叫ぶ。


「もう繋いだのか……」

詩月は呆れながら、席を立ちカウンター前に移動し、電話で話す。


「おい、3時間も前だぜ」

大画面に映し出された、不機嫌そうな理久の顔と声。


「師匠たちと父さんが演奏を始めたんだ、聴こえるかな」


「はああ? 凄い面子じゃん」

理久は言いながら、アダプターでパソコンとホリゾント幕を接続する。


「……実は僕も驚いてる、演奏してる曲が」