色んな物を抱えているな、ミヒャエルは思う。


「クレアは自分の贖罪だと思っているのかもしれないが、詩月は自分が在るのはクレアの意思が有ればこそだと……クレアのヴァイオリンを弾いているのかもな」


――あの着信音、そういう意味か……


ミヒャエルは詩月のスマホ着信音を思い出す。

アマンダ・マクブルームの作詞作曲した「ROSE」の歌詞。


「どうした?」

黙りこんだミヒャエルを覗きこむハインツの顔。


「詩月のスマホの着信音を思い出して」


「『ROSE』だったか」


「日本語のタイトル『愛は花』と言うんだ」


「あれは曲も歌詞もいい。愛はナイフだと歌いながら、愛は花でもあり、愛は命だと歌う」


「挫けるのを恐れてチャンスを逃すという歌詞もある」