私と彼と、屋根の下

「ん~っ!!おいしい~~っ!!」
見た目も可愛らしいショートケーキをフォークで一口サイズに切って口にはこぶ。
とろけるような甘さが口に広がり、のみこんだ。
息を吸うとそれだけで甘い香りが体の中にしみわたり、疲れきった体に一時の幸福をもたらした。
「はあ......。幸せ......♡」
「本当優って甘いもの好きだよねえ」
薫ちゃんが笑いながら言う。
「薫ちゃんだって好きじゃん!」
「好きだけど優程じゃないし」
確かに、私は甘いものが好きだ。
しかもこの店は安くておいしいからいくらでも食べれるのだ!
「太るぞ、優」
「うぐっ...」
(でも、本当においしいな.....。東堂さんにもかって言ったら喜ぶかな.....)


*    *    *

結局買ってきてしまった。
甘さが控えめのモンブランが冷蔵庫の中に入っている。
時刻はくじ。東堂さんはまだ帰ってきていない。
モンブランのこと言わなきゃだし、帰ってくるまで待っていようかな。
私はリビングのソファに腰かけた。



*    *    *

夜が更けた頃、俺は家に帰ってきた。
(今日は少し遊びすぎたな......)
あいつはもう寝ているだろう。
建前上一緒に暮らしているが、俺とあいつはまったくといっていいほど関わっていなかった。
お互いの気持ちがあって結婚するわけじゃない。
遊びたい盛りだし、あいつと仲良くする理由もない。
(......?電気がついている......?)
消し忘れたのだろうか。否、あいつが明かりをつけたままねることは今までなかった。
(起きているのか?)
リビングの扉を開ける
「あ、おかえりなさい」
「......ああ」
「今日、友達とケーキバイキングに言ってモンブランを買ってきたんです。もしよかったら食べてください。.....それとも、甘いものはお嫌いですか?」
「いや......好きだ」
「良かった」
安心したように、ふわりとほほえむ。
それを言うために、今まで起きていたのか。
時計の針はもう0時を過ぎている。
「今は.....もう遅いですよね。明日食べてください」
「ああ」
「じゃあ、おやすみなさい」
「......おやすみ」
一緒に暮らし始めて「おやすみ」と行ったのは初めてだった。
どうでもいいやつと、どうでもいい暮らしだと思っていたけれど。
――――......案外、これも良いかもしれない。