私と彼と、屋根の下

*嫌よ嫌よも好きのうち

ふたり暮らしは、順調でもなかった。さめざめしていると言えば良いかな。
「優おはよ!」
親友の薫ちゃん。薫ちゃんは明るくて私より背がちょびっと小さい可愛い子。
「あれ?元気ないね。どうしたの?」
「まあ、色々ね」
言葉を濁した。お昼安に話そうかな。そして4時間くらい、流れ作業の様に授業を受けて、お昼休みとなった。今日はお弁当だ。たこさんウインナーを簡単に作れるようになったのは進歩かな。
「あ、卵焼き超美味しい!優のおばさんのじゃないかな?これ」
「今日は私が作ったの。殻とか入ってない?お酒の量大丈夫?砂糖と塩間違ってない?」
そんなにまくし立てないで!と薫ちゃんが言った。
やっぱり嬉しい。自分が作ったものを褒められるのは。
昨日の夕食を思い出す。白米ご飯、野菜のスープ、豚肉と青菜の炒め物。付け合せはサラダ。
東堂さんは何も言わなかった。ただ、「いただきます」「ごちそうさま」だけ言った。
おいしいとか、これは何とか言ってくれなかった。
「優。やっぱ何か思い詰めてるでしょ。顔に出てるよ」
驚いた。口調はいつもの柔らかい感じだけど鋭く言い当てられて、いつものように「大丈夫だよ」と言えない。
泣きそうだなあ。薫ちゃんが少し移動しようと言ってる。中庭に行くらしい。

「東堂さんとね、一緒に住んでるけど分かんないの」
一緒に住んで10日も立っていないからに気恥ずかしいとか、顔が合わせにくいとかなら分かる。だけど東堂さんは無関心。
“嫌よ嫌よも好きのうち”の言葉の意味を思い知らされた。その対義語には、無関心が来るのかな。一般的に私は弱いって言われるかもしれない。けど折れそう。辛い。
途切れとぎれになる私の言葉をこぼさないように逃さないように薫ちゃんは聞いてくれた。
「あの伝説の東堂蓮か...。うちはアドバイスできる立場じゃないけど。優はすっごく良い子だけど抜けてたりするところとかあるし、普通の女の子なの」
さああと爽やかな風が二人の間を抜けた気がした。
「だから困ったときには親友の薫さんに話してください!」
薫ちゃんの笑顔はきらきらして眩しかった。見ていて元気が出る。
この子が親友で本当に良かった。
「ありがとう。薫ちゃん!」
さあって!今日はケーキバイキング行くよと薫ちゃんが提案してきた。きっと東堂さんは今日も遅いと思うし、昨日の残り物や前作ったおかずのストックがあるはずだから大丈夫。
放課後に思いを馳せて、あと2時間授業を受ける。ご褒美は大好きな甘いもの。ケーキ。