信号機の音は無慈悲に響く

しばらくすると、警察がやってきた。その中には、昨日、直斗が事故に遭った際に居た警察官も居た。俺は、野次馬と共に警察に剛から無理矢理引き剥がされた。


「剛……」


今なら、あの時の剛の悲しみが分かる。この痛みは、どれだけ経っても、無くすことは出来ないだろう。それを、俺は更に深く抉ったのだ。俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


「悟~!」


後ろから、俺を呼ぶ、何やら慌てた様子の声が聴こえた。声からして、間違いない。菜々子だった。後ろを向くと、自転車に乗ったまま、肩を上下に動かしながら、呼吸を整えている様子の菜々子が居た。


「ねえ、何があったの……?学校で、事故があったって聞いたんだけど……」


まさに、最悪な状況だった。このタイミングで、菜々子が来てしまうとは……


きっと聞いたら、菜々子も泣くだろう。たが、それを未然に防ぐ方法は、無い。