そして当日、最愛が洗面所で顔を洗って、パジャマのままでキッチンへ行くと、礼雅が紅茶を飲んでいる。

「うわっ!」
「何それ? おはようは? 最愛ちゃん」

 最愛が口を開けたまま固まっていると、礼雅はその中に菓子を放り込もうとしたので、すぐに閉じた。

「どうしてここにいるんだ!? お母さん!」

 母の姿を見つけようとすると、背後から礼雅に肩を掴まれた。

「もう出かけた・・・・・・」
「どこにだ!?」
「知らない。外出するときはきちんと鍵を開けたままにしないように言われたな」

 当然、心がけている。鍵を一つしか持っていないので、鞄を変えて出かけるときは必ず鍵も他のものと合わせて入れる。
 テーブルの上には焼き魚があり、鍋の中にはお吸い物と煮物が入っていた。

「朝ご飯は・・・・・・?」
「とっくに食べた。そうでないと、ここに来ないだろう?」
「それもそうだな・・・・・・」

 飲んでいた紅茶を置き、礼雅は器を用意する。

「座っていろ。用意してやる」
「それは・・・・・・」
「いいから最愛は座っていろ・・・・・・」

 お吸い物をよそってくれている礼雅の背中を最愛は見ていた。

「どうしてここにいるんだ?」
「最愛にご飯を食べさせるため?」

 楽しそうに笑っている礼雅の頬を引っ張ろうとすると、それを感じた礼雅は避けた。

「熱いから気をつけろよ」
「ありがとう・・・・・・じゃない!」

 どうして礼雅がここにいるのか、最愛は質問しようとした。

「いや、そこは礼を言うのが正しい・・・・・・」
「そうじゃない」
「だから正しい・・・・・・」

 何度も繰り返して遊ぶ礼雅。