最愛が笑みを浮かべると、礼雅は笑みを消した。

「おい、何か企んでいるな?」
「何も・・・・・・」

 口元を上げて笑うと、礼雅は怪訝そうな顔になった。
 それから礼雅が最愛の顎を持ち上げて、口の端を舐められた。パニックになった最愛が礼雅から遠ざかる。

「・・・・・・さっきから何なんだ!?」
 
 最愛が色気ない悲鳴を上げたので、礼雅はそれを指摘する。

「ふざけたことをするな!」
「だってついていたから・・・・・・」
「言葉にしてくれたらいいだろう!」

 端整な顔が近づいて動揺させられた挙句に動物のように舐められて、顔がほんのりと赤くなる。

「もっと可愛らしく照れたらどうだ?」
「知るか!」

 礼雅に背を向けてお茶を飲んでいると、黄色い用紙を差し出した。

「はい」
「・・・・・・何?」

 そこに書かれていたことは花火大会の案内で、屋台もある。

「こういうの好きだろ?」
「好きだな」

 開催される花火大会の時間は八時から九時までと書かれている。

「五百発以上打ち上げられるみたいだぜ?」
「そんなに!?」

 花火大会がとても好きなので、最愛は絶対に行きたかった。

「一緒に行こう!」
「お前な・・・・・・、そのつもりで渡したんだ」

 最愛はてっきり家族か友達と行くように渡されたのだと思っていた。

「そうだ。だから何も予定を入れるなよ?」
「わかった」

 打ち上げ花火を含む、ねずみ花火や線香花火、ロケット花火も好きな最愛は小学生のときによく両親と礼雅と一緒に花火で遊んでいた。

「花火は夏の風物詩だよな。店にたくさん置いてあった」
「俺も見た。ガキ達が群がっていたな」
「人が多いだろうな」