両手で拳を握りしめていると、礼雅は口先だけで最愛のことを怖がっていた。
 気分転換に最愛が別の音楽をかけようと、パソコン操作をしながら呟いた。

「あのレポートは危なかったな・・・・・・」
「最愛、何かやらかしたのか?」
「テーマと少しずれていたんだ。先生に指摘されたから急いで直した」

 家からレポートを添付して送ると、ずれていたことが文面に書いてあったので、修正してから再度送った。

「良かったな。当日じゃなくて」
「本当に・・・・・・」

 あのまま当日に出していたらとんでもないことになっているところだった。

「お前、外国の学部じゃないのに、外国語や他の科目がいくつも時間割として入っているな」
「どれも面白そうだと思った。レポートを出した科目は全体的に話がややこしくて、別の科目にすれば良かったな・・・・・・」

 一年間の単位は全部で五十単位以上あるので、一限からの授業が多い。他の学生達の単位は四十前後。
 イタリア語と悩んで、秋学期にイタリア語を選択した。春学期にイタリア語にして、秋学期のイタリア語のところに別の科目を入れるべきだった。
 最愛はふっと溜息を吐いて、ドイツ語の教科書とノートを閉じた。

「さてと、こんなものだな」
「暗記したか?」
「あぁ。疲れた・・・・・・」

 最愛が両手を伸ばしていると、礼雅に脇を擽られた。

「こちょこちょこちょ・・・・・・」
「あはは!!」

 慌てて礼雅から離れても、まだ最愛は笑いが止まらなかった。

「楽しかっただろ?」
「楽しくない!」