約束の時間が過ぎても電話がかかってこない。仕方なく電話をかけてみるが、反応がなかった。

「遅くなっているのか? 最愛・・・・・・」
「・・・・・・ん? 最愛?」

 誰にも聞こえないくらいの声だと思ったら、そうではなかった。
 知らない声に振り向くと、二人の学生達が重そうな鞄を抱えながら凝視している。

「最愛ちゃんと知り合い?」

 礼雅が微笑んで近づくと彼女達は同時に頷いた。

「私、最愛の友達の皆葉深香です」
「私は佐伯芽実と言います」

 自己紹介をしたのもされたのも本日二回目。

「深香ちゃんは最愛ちゃんに見せてもらった高校の卒業写真で見たことがあった」
「そうですか」

 最愛の居場所を質問すると、彼女達から意外な返答が返ってきた。

「今日は最愛、四限までなんです。もう帰ったのでは?」

 最愛と待ち合わせをしていた。先に帰るはずはない。

「でも、最愛ちゃんは大学にいるはず・・・・・・」
「最愛、大学に入ってから様子がおかしいんです。追いつめられたような顔をしていて・・・・・・」

 不安そうな顔をしている深香の肩を芽実が叩いた。

「深香、那知上さんは? 番号を知っているんだよね?」
「うん。かけてみるね」

 芽実は顔色をすでに変えて焦っていた。深香は不安になりながら、自分の腕を叩き続けている。

『もしもし、どうしたの?』
「あの、四限のとき、最愛と同じ授業だったよね?」
『うん。どうかした?』

 深香は焦りが募り、無意識に早口で話していた。

「あの子がどこへ行ったか知らない? 実は最愛、人と待ち合わせをしていて・・・・・・」
『もしかしたら、大学へ行ったのかもしれない・・・・・・』

 詳しい事情を知って大学へ向かって最愛を捜した。
 すれ違う人達に声をかけていくと、その中の一人が目撃証言をした。