ついこの間まで優しくて穏やかだったのに、豹変してからそれが粉々に砕け散った。
 キスマークが消えるまでアクセサリーやスカーフで誤魔化すことができていて、つけた本人は舌打ちして不満を言い続けていた。

「それより最愛、どうして彼に嘘を吐いたの? もう授業なんてないのに・・・・・・
「それはだな・・・・・・」

 誤魔化しなんて通用しない。真名は鋭い目つきで最愛を見た。

「ちょっと調べたいことがあるから」
「最愛、さっきも言ったけど、駄目だからね」
「わかっている」
「絶対だよ?」

 最愛が頷くと、すっと真名の目が細まり、疑いの眼差しに変わり、口調が強くなった。最愛は口先だけで取り繕った。本当はあの二人のことしか考えていない。
 大学を出て、限られた時間までに何とかしようと自ら二人が通う大学へ行った。もしかしたらすでに帰っているのかもしれないと思ったが、行くだけ行ってみることにした。大学に着いて、その辺を歩いている大学生に声をかけながら見つけようと考えていたところ、知っている人が下の階段から出てきた。
 友達だったとき、たまに一緒に遊びに行ったことがあり、そのときの服装と全然違っていた。伏貫の格好は全身黒ずくめで、見た感じ近寄りたくない。

「どうして・・・・・・」
「あの、こんなところで何をしているのですか?」
「わっ!」

 伏貫に気を取られていると、背後から見知らぬ女の子がこっちに気づいた。その声に彼も気づいて大股で歩きながら、距離を縮めた。

「彼女は俺の友達。待ち合わせをしていたんだ」
「そうだったの? じゃあね」

 女の子が去ってから彼の表情が一変して、恐怖が募った。