「知り合いが被害を受けている女の子に相談されているんだ。高校三年生のときに男の子がとても可愛い女の子に告白をしたんだけど、断られたみたいなの。それでその後にその被害を受けた女の子と恋人同士になったんだって」
「でもね、それから断った女の子が男の子のことをやっぱり好きだったみたいで、女の子に嫌がらせを頻繁に繰り返しているみたいなの」
「その人達の名前を知っていますか?」

 嫌な予感がする。彼女達から出た名前に全身が凍りついた。
 ーー鴨狩雛と伏貫煌牙。

「最愛、知っているの?」
「あぁ・・・・・・」

 真名がこっそり耳打ちして、最愛は小さく頷いた。

「男の子は相当怒っていたんでしょ?」
「そうだね。どこまで真実かわからないけど、でも全て真実だったら恐ろしいよね」
「本当、本当。あたし達が聞いたのはこれくらいだよ?」

 最愛は慌てて二人に深く頭を下げた。

「話してくれてありがとうございました」
「どういたしまして。次、授業があるから行くわね?」
「はい。引き止めてすみませんでした」
「いいよ、いいよ。じゃあね」

 彼女達と別れて、自動販売機でアイスティーを買って、気持ちを落ち着かせた。
 真名は彼女達から今まで聞いた話の内容を整理した。

「つまりこういうこと? 被害者面をしている女の子が加害者で男の子はそれに騙されていて、最愛は被害者」
「そうなるな」

 自分は何もしていないのに、嘘を信じている者がいる。

「そんな・・・・・・」
「どうしてこんなことになったんだ?」

 どういうつもりでやっているのかは知らないが、もうここまで来ると黙ってなんかいられない。