その言葉を聞いて、礼雅はすぐに笑いを止めた。

「・・・・・・裏切る? 俺がか?」
「そうだ! 前からな!」

 一体何を裏切ったのか考えていると、最愛が話を続ける。

「大学生になってからしつこくストーカーをして、犯罪者じゃないか!」
「お前・・・・・・」
「私に何の恨みがあるんだ? ずっと私に優しくしてくれたのは嘘だったんだろ? 裏切り者! もう嫌だ!!」

 さっきよりも激しく暴れようとすると、最愛の頬に礼雅の手が触れて目を合わせるようにした。

「どうしてストーカーが俺だと思った?」
「私がキーホルダーを落としたときに家へ行こうとしたら電話の話している内容が聞こえた。だけどそれだけで判断できなくて、帰りに路地裏を通ったときに角を曲がって隠れていたら、走って私を見つけようと周りを見渡していたから」
「お前は誤解している」

 最愛が泣きじゃくっているといると、礼雅に乱れた服を整えて涙を拭われた。涙でぼやける視界から礼雅の顔を見ると、怒りは消えている。

「・・・・・・何を誤解?」
「順に説明するから聞けよ。電話で話していた内容はお前の母親に迎えを頼まれてから、店で時間を潰して待っていて、いつも俺に気づかないで店の前を通り過ぎたんだ。そのことを話していた。次に路地裏。あれも驚いた。いつもと違うところから出てきたと思って、店から出たときにはどこにもいないから。しばらく走り回っていたんだ」

 礼雅が携帯電話を使わなかったのはタイミング悪く、電池が切れていたから。

「じゃあ裏切ってなんか・・・・・・」
「いないな・・・・・・」