「写真を見せたの。最愛の写真」
「・・・・・・何の?」
「ちょっと待っていてね」

 待っている間にカレイをほぐして食べていると、母が一枚の写真を手にして椅子に座った。
 その写真を見た瞬間、最愛は叫び声を上げたくなった。
 その写真は父が悪戯心で最愛からぬいぐるみを取ろうとしていたので、半べそをかきながら必死にしがみついている写真だった。

「嘘だろ!?」
「これはお守りだから」

 冗談じゃない。こんなものは破り捨てて当然なので、実行に移そうとしたとき、母は最愛から写真を取り上げた。

「ちょっと、何をするの!?」
「破り捨てようと思って・・・・・・」
「駄目! 私の宝物なの!」

 最愛が睨みつけると、さっさと写真をどこかに隠してしまった。破り捨てることに失敗した最愛は舌打ちをした。

「せめて人にあんなものを見せるのだけは勘弁してくれ」
「可愛いのに・・・・・・」

 不満を漏らしていたが、食事をすることに集中した。
 味噌汁には数種類の野菜が入っていて、とても美味しく、寒い日に食べるには最高。

「最愛が料理をしてくれると思っていたのに、全然帰らないから」
「ごめんな。どれも本当に美味いよ」
「良かった。おかわりしてね?」
「ああ、そうする」

 もちろん、言われなくてもする。最愛も料理をするが、まだまだ母のレベルまで達しない。
 でも、いつかは同じくらいにできるようになりたいので、これからも料理を頑張る。

「おかわりを入れようか?」
「ありがとう。軽めに」
「了解」

 母に茶碗を渡してから、自分の分もよそって入れた。父の分まで食べることができるかもしれない。
 ご飯を口の中に入れて味わいながら、そんなことを考えていた。