「どこへ行ったのかな?」
「食べ物を買いに行っちゃったの・・・・・・」
「あぁ・・・・・・」

 母が行った場所はスーパーマーケットで、母に好きな菓子を買うように頼んだ。

「何時に戻るかな? お母さんに聞いた?」
「言っていない・・・・・・」
「あぁ、そっか・・・・・・」

 戻る時間まで聞いていなかったから、わからなかった。
 家に帰っても誰もいない上に絆創膏を使い切ったばかりだったので、最悪だった。 

「はぁ・・・・・・」
「あのさ・・・・・・」

 声をかけられたので、ふと顔を上げる。

「・・・・・・何?」
「俺のとこにおいで?」
「・・・・・・ん?」

 少女が首を傾げると、彼も同じように首を傾げた。

「・・・・・・家に?」
「そうだよ」

 少女の傷を手当てするために少年は家に誘った。

「行ってもいいの?」
「うん」

 少年はにっこりと笑って頷いて、傷を見る。

「すぐに手当てしないと、傷に黴菌が入ると大変だ」
「このマンションに住んでいるの?」

 もしもこのマンションに住んでいなかったら、ここから少し離れた家に住んでいるということになる。

「そうだよ。俺、六階に住んでいるんだ、君の家の下にね」

 少女は初耳だったので、今日そのことを知った。

「知らなかった・・・・・・」
「やっぱりね・・・・・・」

 この人は誰だっただろうと記憶を辿ってみるが、記憶になかった。
 少しの間、行こうかどうしようか悩んでから少年と行くことにした。ここで座っていても何も起こらない。

「じゃあ行こうかな」
「よし! じゃあ、おぶるね」
「うん!」