放課後、美鈴は最愛と甘いものを食べに行くために、中庭で最愛と待ち合わせをしていたので、向かっていた。角を曲がろうとしたときに人とぶつかって、美鈴は鞄を落とし、相手は携帯電話を落とした。
　ぶつかった相手は昼休みに最愛と美鈴が話していた餌打だった。

「俺のことを諦めてくれて良かった・・・・・・」

　餌打の第一声がそれだった。美鈴は気づかれないように心の中で溜息を吐いた。

「・・・・・・あたしのこと、そんなに嫌だった？」
「当たり前だろ？　お前みたいな女にずっとこっちに寄られていたら、どうしようかと思った」

　それを聞いた美鈴は怒鳴り散らしてやりたかった。
　美鈴はとっくに餌打のことを憎んでいる。見たくないものを見て、聞きたくないことをたくさん聞かされ、全部が悪夢のような現実であることを思い知ったから。

「前に気になる人がいることを話したよね？」
「あぁ・・・・・・」

　いつだったか、そのことを餌打が美鈴に言ったことを忘れていない。

「その人とは仲良くやっているの？」
「仲良しだよ。何？　そんな話を聞きたかったの？」

　餌打が嘲るように笑っても、美鈴は表情を変えなかった。

「何？」
「女を甘く見ていると、後が怖いよ」
　
　美鈴はそれ以上何も言わず、餌打の横を通り過ぎて行った。後ろで餌打が何か言っているが、ひたすら前へ突き進んだ。
　美鈴が内心、腹を立てていることに彼は気づかなかった。

「絶対に許さない・・・・・・」