古霜先生は最愛を責めるような言い方に、最愛は不快感を感じた。

「古霜先生は自分が私と噂にならなくて、気に食わないのですか?」
「否定はしないね。実際によく話を聞かされて、嫉妬でおかしくなりそうだよ」

 古霜先生が嫉妬する人とは今まで一度も思っていなかった。いつも余裕で、取り乱すことをしない人だと最愛は思っていたから。

「最愛」
 
 名前を呼ばれても、最愛は少しも嬉しくない。

「許可していないです・・・・・・」
「そんなことを言うな。できれば俺の名前を呼んでほしいのに・・・・・・」

 どんなに待っても、最愛が古霜先生の名前を呼ぶ日なんて来ない。

「先生は先生ですよ?」
「ったく、相変わらずだな・・・・・・」

 少しくらい名前で呼ぶように言っても、最愛は決して彼の名前を呼んだりしない。
 古霜先生は我慢できなくなり、最愛を抱きしめた。突き飛ばしたくても、動くことすらできない最愛は古霜先生にされるがままだった。

「最愛は俺が思っていた女の子と違うな・・・・・・」

 最愛がどんなに離れようとしても、古霜先生は離れようとしない。
 自分のことをどんな風に思っているのか。

「・・・・・・どういう意味ですか?」
「こんなに人に懐かないと思っていなかった・・・・・・」

 古霜先生は責めていないことを最愛に伝えた。それに対して、最愛は何も言葉を発することはなかった。

「俺がお前のことをどれだけ好きか知っているのに、少しは緩めてくれてもいいんじゃないか?」
「先生・・・・・・」

 さっきからやっぱり彼は自分のことを責めているようだ。

「さっきも言ったが、責めていない」