女の馬鹿にするこの男を恨めしく思った最愛は餌打の肌に噛み千切る勢いで噛みつくと相当痛かったのか、餌打の悲鳴が木霊した。
 すぐに最愛を突き飛ばして痛みに耐えながら、凄まじい眼光で最愛を睨みつけている。

「何してくれているんだよ!!」
「何? 怒っているの?」
「当たり前だろ!」

 彼がどんなに痛がろうと、最愛は知ったこっちゃない。

「痛っ! とんでもないことをするな・・・・・・」
「へぇ、痛いんだ? だけど、あんたが悪いでしょ!? 人を馬鹿にしたりするからよ!!」

 最愛の怒鳴り声で誰かが気づいたのだろう。足音が近づいているので、その場から離れた。痛みのせいで床に転がっている餌打を嘲笑ってから。
 最愛は家に帰ろうか迷いながら、電車に乗っていた。怒りをどこかに消すために本を読んでいたけれど、先程のことが忘れられずにいて、本を閉じて鞄の中に入れた。
 少しずつ学校へ行くことが嫌になってきている。まだ二年生になったばかりなのに。どんなに溜息を吐いても、気持ちはこれっぽっちも晴れない。

「嫌だな・・・・・・」

 休日が終われば、また学校へ行かなくてはならない。会いたくない人達ばかりいるところへ。
 嫌な気持ちを抱えながら、休日を過ごして、月曜日はあっという間に来た。

「最愛! おはよ!」
「深香、おはよう・・・・・・」

 溜息を吐いている最愛を見て、深香の笑顔が消えた。

「どうかした? 最愛」
「えっと・・・・・・」

 元気がないので、深香は心配している。

「今日から学校が始まるから、ちょっと憂鬱になっていただけだよ」
「それはそうね・・・・・・」