こんなところを他の生徒や先生に見られては変な噂が流れることは目に見えている。
　餌打を睨みつけようとしても、呼吸がやりにくいくらいに抱きしめているからそれもできなかった。
　息を吸おうとしたとき、最愛は餌打に押し倒されて、恐怖と嫌悪感で全身が震える。

「まさか年下の女の子を好きになるとは思わなかったな」
「いい加減にして・・・・・・」

　最愛の声が低くなっても、彼はそのことに気づいていない。

「何をしてもらっているの？　何も知らないような顔をして、学校で学ぶような勉強以外の勉強もしているとか？」
「何のこと・・・・・・」

　餌打の言っている意味がわからず、最愛が何も言わないでいると、餌打は深い溜息を吐いた。
　初めて最愛を見たときから印象は良くなかった。容姿が良いだけでたくさんの人達に好かれて、それに満足する女。
　餌打が最愛に抱いた印象はその程度のものだった。

「いつまでこんなことをしているつもり？　誰かに見られたらどうするの？」
「特に問題はないだろ？」

　これのどこが問題ないのだろうか。どこをどう見ても、問題がある。

「どこかへ行って・・・・・・」
「そんなにこうされるのが嫌？」
「当たり前」

　目の前にいる男の声が耳に障る。強い口調で言ったところで、何も変わることはなかった。
　この従兄弟にこれ以上振り回されたくない。

「ねえ、どうやって近づいたの？　自分の容姿を武器に使った？」
「そんなことーー」

　餌打は最愛に話す時間さえ、与えてくれない。

「どうして圭が夢中になっているのか理解できない。女なんて男がいないと何もできないのにさ」
「くっ！」

　何かが音を立てた瞬間だった。餌打が言ったことに対して最愛はキレた。