「何の話をしたんだ?」
「女同士の話よ」

 角重先生の返事に古霜先生はじれったそうにしていて、いつもの笑顔は消え失せていた。角重先生はどこか余裕の表情で古霜先生を見上げていた。

「気になるのなら、本人に確認したら?」
「そんなことできない。お前に口封じをされている可能性があるし、あの性格だから傷つけられていても絶対に言うことはない」

 最愛のことを何でも知っているような口調に苛立ちを覚えながら聞いていた。仮にそうなったら、嫌々でも言っていただろう。
 相変わらず最愛のことを勘違いしている。最愛は周囲を気にしながら二人の会話を聞いていた。

「優しいのね・・・・・・」
「いつだって優しいさ」

 最愛のことを良く言ったので、角重先生は不機嫌になった。

「だけど思っていたより、そんなに大した女の子じゃないみたいね」
「ふざけるな。それといい加減白状したらどうだ?」

 角重先生は不気味な笑みを浮かべたまま、古霜先生に近づいて囁くように言った。

「私とあなたが他とは比べ物にならないくらい、深い関係だと伝えたのよ」
「なっ!」
「これで満足?」

 古霜先生は唇を震わせながら動揺していた。

「・・・・・・あいつは?」
「それを話して少しして、私の前を去ったわ」

 古霜先生は角重先生を押して、どこかへ走り出そうとしている。角重先生は慌て、古霜先生の腕を掴んで引き止めた。

「どこへ行くの?」
「あいつに会いに行く」
「駄目よ! そんなことさせない!」

 角重先生は眉間に皺を寄せて、手に力を込めていた。
 まるで玩具が手元から離れようとしていることを許さないと言っているようだった。

「もっと私を見てよ。あんな子なんてどうでもいいじゃない。可愛さに惑わされているだけ!」
「やめろ!」