この気持ちをあなたに伝えたい

 さっきより古霜先生との距離が縮まったことに気づいて後退するが、それを見逃してくれる相手ではなかった。

「先生、近いです・・・・・・」
「少しくらいいいだろ?」
「良くないです・・・・・・」

 ここから逃げるようにと警鐘が鳴り響いている。逃げ道はないかと先生から視線を外したときに自分の肌を滑る感触に寒気が走った。
 彼に触れられたくないところを触れられ、羞恥と恐怖で頭が混乱した。悲鳴を上げて古霜先生を突き飛ばした。

「そこまで拒絶することはないんじゃないか?」
「どうして・・・・・・」

 やれやれといった感じに言われ、言葉を失った。どうしてこんなことをされたのか、理解できなかった。

「だって・・・・・・」
「そんなに顔を赤くして、どうしたんだ?」

 古霜先生の笑いを含む声を無視して、急いで立ち去った。玄関で靴を履き替えて学校が見えなくなるまで全力で走った。乱れた息を整えながら歩いていた。
 あんなことをする人だとは思わなかった。怖くて何もできなかった自分を恨めしく思いながら、壁を拳で殴った。顔が赤かったのは風邪や怒りのせい。明日も学校があることを思い出し、彼のところには絶対に行くまいと心に決めた。
 その日の夜は眠ろうとしても、なかなか眠ることができず、睡眠不足を引きずったまま、学校へ行った。
 学校の中はいつもと変わらず、朝錬に励んでいる生徒達や友達同士でお喋りを楽しんでいる生徒達が見られる。
 今朝も薬を飲んだので、喉や頭の痛みは昨日ほどではない。徐々に治ってきていることに安堵の溜息を吐いた。