この気持ちをあなたに伝えたい

 女子達は顔を青くしながら焦っているだろう。さっきの甘えた声はもう出さなくなった。

「今日は帰ります・・・・・・」
「よし。寄り道せずにちゃんと帰るな?」
「はい・・・・・・」

 さっきまではしゃいでいたとは思うことができないくらい、彼女達の声が沈んでいた。

「気をつけて帰れよ」
「・・・・・・さよなら」

 古霜先生は保健室から出ようとする女子達を笑顔で見送り、そっとドアを閉めた。

「起きたのか?」
「・・・・・・先生、そろそろ帰ります。寝たからだいぶ良くなったので」

 最愛達がいる場所は保健室で、化学の授業中に気分が悪くなったため。

「先生?」
「まだつらいだろう? もう少し休みなさい」

 引き止めようとする古霜先生に首を振り、自分の鞄を手に取ろうとしたとき、そっと肩を押され、ベッドへ戻そうとする。
 このままここにいると、暗くなってしまう。歩けるので、鞄を抱えて保健室の外に出た。

「待て!」
「・・・・・・何ですか?」
「熱はどうなんだ?」

 外に出ても、古霜先生は最愛を帰そうとしない。

「ないと思います・・・・・・」
「赤いぞ」

 古霜先生の手が最愛の前髪を上げて、額に触れると汗ばんでいた。

「男の人の手は大きいですね」
「今まで男に触れられたことはないのか?」
「そういうわけでは・・・・・・」

 そう言った途端に古霜先生の顔が少し険しい顔になったことに気づいて驚いた。

「・・・・・・キスは?」
「はい・・・・・・?」

 何の質問をされているのか、一瞬わからなかった。

「もう一度言ってください」
「誰かとキスをしたことがある?」
「ありません」

 おかしな質問をされて、怪訝そうな顔になる。

「触られたことも?」
「握手とかでしたら、たまにしますよ」