目障りな上に耳障りなこの状況に耐えることができない。

「耳元で騒ぐな・・・・・・」
「いい加減にしろよ・・・・・・」
「どっちが・・・・・・」

 最愛が耳を塞いでいると、伏貫は怒りで拳を震わせている。

「本当に腹が立つ奴だな。雛ちゃんと大違い」

 最愛はそれを聞いて、眉を動かした。

「本当に全然違うな・・・・・・」
「可愛いと思っているのか?」
「そうだ!」

 鴨狩雛(かもがりひな)。同じ年齢で可愛らしさと同時に色気もあり、多くの男達を虜にする。
 そして最愛を目の敵にしている。理由は目当てだった男が最愛に好意を抱いていて、彼に告白されて断った後も彼は最愛のことを気にかけていることを知ったから。
 女王様のように常に上から目線で偉そうな態度でいて、嫌がらせをしてくる女を可愛いと思い込んでいる伏貫が滑稽だった。

「何を笑っているんだよ!?」
「いや、何も・・・・・・」

 最愛は気づかないうちに笑っていたようだ。それを見た伏貫はさらに怒りを大きくした。

「言えよ!」
「だって、面白いことを言うからな」
「どこがだよ?」

 いちいち細かく説明する気がないので、最愛は伏貫を追い払うことに決めた。

「さっさとあのどうしようもない女のところへ行ったらどうだ?」
「悪女だな、お前・・・・・・」

 本当に性格が悪くて、最低な女は他にいることを伏貫は気づいていない。

「ほら、早く行けよ」
「それ・・・・・・」
「ん?」

 どれのことを言っているのかわからずに黙っていると、伏貫は眉間に皺を寄せる。

「その男みたいな喋り方も嫌だったんだ」
「あぁ・・・・・・」