爽やかな笑顔で迎える礼雅が両手を広げて待っている。

「私は添い寝に来たんじゃない!」

 怒る最愛に礼雅は冗談であることを伝える。

「それにしてもしょっちゅう悪夢を見てしまうなんて、ストレスでも溜まっているんじゃないのか?」
「ストレス・・・・・・」
「そうだ」

 最愛はずっと礼雅に高校の頃の話をするかしないかで悩み続けていた。

「前まで私の高校生活についてずっと聞きたがっていただろ? なのに、今はそのことを口にしていない・・・・・・」
「だって話そうとしないから。そんなに嫌なことがあったんだったら、無理矢理話させるのは良くないだろう?」

 最愛は背筋を伸ばして、息を整えた。

「かなり長話になる。今でも聞きたいか?」
「隠されると知りたくなるからな」
「わかった・・・・・・」

 最愛は礼雅に高校生だった自分のことについて話をすることに決め、ゆっくりと口を開いた。


 最愛が恋愛に対して怯えるようになったのは高校生のときだった。
 年に数回風邪を引く最愛はときどき保健室へ行き、ベッドで休むことが何度かあった。
 二学期が始まって数日経った頃に頭痛やしんどさに耐え切れず、保健室で休ませてもらっていた。

「先生、最愛は?」
「名波か?」
「そう、起きています?」

 聞こえてきたのは深香の声だった。声を出したかったが、喉を完全にやられていて、普段の声がこれっぽっちも出ないことにがっくりと項垂れていた。

「まだ寝ている。さっきより咳は少しだけましになっている」
「早く治さないとね」
「そうだな」

 さっきまで咳が止まらず、何度もお茶を飲んで、ようやく落ち着いたところだった。

「名波のことは先生にまかせて、もう行かないと駄目だろ? 行くんだ」
「はい。じゃあ、よろしくお願いします」
「わかった」