「あの、今日はこの子と一緒に夕食を食べてもいいですか? 食べたら家まできちんと送りますので」

 母は最愛を見てから静かに口を開いた。

「礼雅君が家においで」
「いいんですか?」
「えぇ、大勢で食べたら箸が進むからね!」
「やった!!」

 母に満面の笑みでお礼を言うと、礼雅も深々と頭を下げた。最愛はうさぎのようにピョンピョン飛び跳ねて喜んだ。
 話がまとまったので、礼雅は最愛の家に足を踏み入れた。

「礼雅お兄ちゃんが私達のところへ来るのは初めてだね」
「そうだね。いつも最愛ちゃんが俺のところまでが当たり前のようになっていたから」
「いいことを思いついた!ちょっと待っていて」

 話を中断して、母がいるキッチンへ行き、あるお願いをして、白い用紙を持って礼雅のところへ再び戻った。

「礼雅お兄ちゃん、これを見て!」
「その紙は何?」

 紙はあみだくじで線の先には料理名が書いてある。これから作る料理を一品だけ書いてもらい、それに正解すればいい。
 最愛が考えた勝負で、最愛は礼雅に勝負を挑み、彼はそれに応じてくれた。

「ご飯、何だと思う?」
「そうだな・・・・・・」

 選択肢として選ぶことができるものは焼き魚、ロールキャベツ、ナポリタン、チャーハン、ステーキ、八宝菜。

「どの線がいい?」
「じゃ・・・・・・これ!」

 礼雅が選んだ線は右端に書いてあるナポリタンで、最愛はその隣の八宝菜にした。線を辿っていくと、礼雅の選んだ線に花丸が記されていた。それは最愛の負けを示していた。

「俺の勝ち」
「あーあ、負けちゃった」

 最愛の顎を指先で擽りながら礼雅に遊ばれた。しばらくすると夕食のいい匂いにつられてキッチンへ走った。
 小学生の最愛にとって、礼雅との出会いはとても大きなもので、この関係がずっと続くことが最愛の願いとなった。