そんなあの子の存在に気付いたのは、5月の半ば頃。


友達とサッカーするために、初めて早弁をして昼休みに校庭に出たときのこと。


どっかから不思議な音が聞こえるとか言って、サッカーをやめた。


すると、屋上に人がいてそこであの子が楽器を吹いていた。


そのとき、俺はあの子の姿に釘付けになった。


楽器を持って凜とたたずむ姿がすごく頭に残った。


それからというもの、俺らが校庭に出ると、あの子は必ず屋上にいた。


俺らがサッカーをしている後ろで楽器が鳴っているといった感じ。


背景となっている。


この日からそんなあの子をこう見つめるようになった。


好きってわけではない。


だってあの子のこと何も知らないし、顔だってよく見えない。


気になるって言う方が妥当かな。


クラスも名前も知らないあの子。