「久しぶり、鈴丸。大きくなったなぁ。」


「こんにちは!」



人目を気にせず話せるように個室のある店を予約した。



しばらくすると、直季が鈴丸を連れて現れた。



「じゃああたしは店に戻るね。」


「あぁ。」


「おかーさん頑張ってね。」


「ありがと。鈴丸をよろしく。」


「おう。」



直季を見送ってから、鈴丸にメニューを渡す。



「はい。好きなもの頼みな。」


「んんー…。」



行儀悪くテーブルに頬杖をついて鈴丸を見つめる。



メニューとにらめっこをしている鈴丸は、顔の上半分は直季に似ている。


目はパッチリしていて、眉は意志の強そうな凛々しい感じ。



鼻から下は…アイツ似だな。



「恭平さんは?」


「…俺?俺はえーと…和風ハンバーグにしようかな。」


「じゃあ僕もそれにする!」


「わかった。」



恭平が店員に和風ハンバーグを2つ頼む。



椅子に座りなおすと、鈴丸に向き直った。



「…さて、お母さんからどこまで聞いてる?」


「恭平さんがおとーさんになるってとこまで!」


「…うん、全部だな。」



まぁ直季が遠まわしの言い方なんてできるはずないか。



「じゃあ鈴丸は俺とお母さんが結婚するの、許してくれる?」


「…結婚て、悪いことなの?」


「えっ?」



一瞬ドキッとして、鈴丸を見つめる。



まさか直季、金のことまで鈴丸に教えて…



「だって許すって…」


「あ、あぁ。違うよ。俺とお母さんが結婚してもいいかって意味で訊いたんだ。」



…ただ、許すという言葉が引っかかっただけのようだ。


あーびっくりした。



「うん!だって恭平さんと一緒に暮らすの、楽しそうだもん!」


「…。…そうか?ありがとう。」



…小学生にとっての親の再婚の認識なんて、そんなもんだよな。



「じゃあ、さ。俺がお父さんになったらこうして欲しいとか、そういうお願いはある?」


「んー…。」



鈴丸が考え始めたとき、和風ハンバーグがテーブルに運ばれてきた。



「わああ!おいしそう!食べていい!?」


「ん、どーぞ。」


「いただきます!」



パクパクと食べ進める様子を見て、自然に頬が緩む。



あぁ、直季が溺愛してるの、わかるような気がするなぁ。



「…ちゃんと噛むんだぞ。」


「う!」


「あははっ何だそれ。」



鈴丸が小さい口いっぱいにハンバーグをつめこむのを笑ってみながら、食事を終えた。



「お腹いっぱいー。」


「そっか、よかったな。」



恭平が食後のタバコを吸おうとして、子供の前だったと気づき、箱を戻す。



「…あのね、さっきの。」


「うん?」


「さっきの、恭平さんがおとーさんになったらっていうのね?」



ハンバーグが運ばれたことで途切れていた話を戻す。



「…おかーさんのこと、いっぱい助けてあげて欲しいの。」


「…!」


「おかーさんね、ずっと、お昼も真夜中もずっと、お仕事してるの。この前もね、僕の部屋でこてんって寝ちゃったんだ。」



鈴丸を驚いて見つめる。



…俺がこのくらいの頃、母親の心配なんかしてたっけかな…。



「だからね…おかーさんを助けてあげて欲しい。お願いします。」


「…わかった。約束な。」



鈴丸と指切りをすると、鈴丸は今日見た中で一番嬉しそうな顔をした。



「ありがとう…っ!」


「…お前は偉いなぁ…。」



恭平が感心してため息をついた。


鈴丸の頭をなでなでする。



「じゃ、話もまとまったところで、デザート頼むか!」


「デザート?食べていいの!?やったぁ!!」



楽しく食事を終え、二人仲良く直季の待つカフェへと帰った。