「…い、おい。直季。」


「あ…ごめん、なに?」



恭平が怪訝そうな顔をする。



「どうした?具合でも悪いのか?」


「…どうもしないよ。ちょっと考え事。」



カウンターに頬杖をついて直季の顔を見上げる。



「直季…。」


「そういえば今日藤ちゃんは?」



恭平を遮るように尋ねた直季に、ますます眉を寄せる。



「…藤村は新製品のデータがどっか行ったって大騒ぎしてたから、多分今日は来ない。」


「え、それまずいんじゃ…」


「まぁ俺がコピーとってあるから大事にはならないけど、ちゃんと探せって言っといた。」


「ふーん…。」



恭平がカップに口をつけたのを見て、思い出したようにカップを磨く。



「…。」



そんな直季を不思議そうに見ながら恭平がカップを置いて時計を見た。



「うわもうこんな時間か。」


「…?まだ昼休みでしょ?」


「俺このまま得意先行くんだわ。あ、お会計、昨日の分も。」


「うん。」



昨日の分と合わせてお金を受け取り、レジにしまう。



「また明日。」


「あぁ。またな。」



慌ただしく店を出ていった恭平のカップを流しに持っていく。



「…。」


カップを洗って、渇かして、しまう。



そしてドアにかかっているopenと書かれている木の板をひっくり返してclosedにした。



さて、あたしも支度しなくちゃ。