「ミルクティーもう一杯頂けますかー?」


「はーい…あ、お砂糖切らしちゃってる。ごめんちょっと上からとってくるね。」


「はい…ん?」


「ん?」



突然立ち上がった藤村に驚いて直季と恭平が顔を上げる。


藤村は鼻をぴこぴこさせてピン!と何かに気づいたような顔をした。



「直季さんシャンプー変えましたね!?」


「え、ええ!?」


「お前は犬か…。」



呆れ顔で恭平が藤村を見つめる。



まだ鼻をひくつかせている藤村が首を傾げた。



「でもこのシャンプー碓か誰かも使っていたような?」


「俺だろ。」


「え?あぁ!そうですそうです!課長のはタバコとコロンで分かりづらいですけど…ってあれ?何でシャンプーの種類わかったんですか?」



恭平はとん、と灰皿に灰を落としてから何でもないことのように言った。



「俺ら結婚して同棲してるから同じシャンプーなのは当たり前だろ?」



みるみる藤村と直季の目が見開かれる。



「ちょっと!恭平!」


「いずれバレるんだから言っといた方がいいって。」


「えええええ!?いつの間にそんなことに!?」


「さぁいつだろうなー。」



昨日だっ!



突っ込みたいのをぐっと堪えて砂糖を取りに2階へと上がった。



「えーうそうそっ仲いいふうには見えなかったのにー!」


「まぁ仲なんか良くなくても結婚はできるしな。」


「ええっどういうことですか!?」


「何でもいいけどお前声デカイって。耳キンキンするんだけど。」


「あ、すみません。…じゃなくてー!」



藤村が大騒ぎしていると降りてきた直季がため息をついた。



「はい、どうぞ。ミルクティーです。」


「あ、ありがとうございます。」



どんな時も食欲優先の藤村がおかわりのミルクティーによってやっと席に座り直した。



「…で、そもそもお二人お付き合いされてたんですか?それに碓か直季さんお子さんいらしたような…」


「…。」



ちらり、と恭平を見ると我関せず、と言った様子でコーヒーを飲んでいる。



いらっとして答えた。



「確かに、いるよ。息子が一人。こんな結婚においての悪い条件の例みたいなあたしとどうして結婚しようと思ったのか…」


「…ま、だからそういうのも。」



コトン、とカップを置いて藤村に耳を貸すように恭平が手招きする。



「愛してっから関係ねぇとか、思っちまったんだよな。」


「っうーわー!!?」


「なに?何言ったんだよ?」


「何も。」



再び叫んだ藤村に驚いて恭平に尋ねるがはぐらかされた。



「…まぁ課長と直季さんだったらうまくやっていけそうですし、お幸せに。」


「どーも。」


「ホントに何言ったの…。」



突然態度の変わった藤村の様子を見て顔を引き攣らせる。



「そろそろ帰るわ、ごちそうさま。」


「ごちそうさまです。」


「あぁはい…。また明日ね。」



最後まではぐらかされて、恭平と藤村は会社へ戻っていった。