「ん…。」



キッチンから何やら騒がしい音がしてがばっと起きる。



な、ん、泥棒!?



慌ててキッチンに向かうとエプロンをつけた直季がいた。



「あ、起きた?おはよう。」


「おはよ…って、なにやってんの?」


「一回向こうの家に戻っていろいろ持ってきたの。こんな朝早くからファミレスは開いてないでしょ?」



あぁまぁそうなんだけど…。



…そうだった。


昨日から直季と鈴丸がいるんだった。



「どうせあんたは朝ごはんは食べないとか言うんでしょ。でももう作っちゃったから、食べてね。」


「あぁ…うん…。」



まだ覚醒しきらない頭を左右に振る。



「さて、鈴丸起こしてこなきゃ。先食べてて。」



そう言って直季は鈴丸の部屋に入っていった。



テーブルには目玉焼きとベーコン、野菜スープが乗っている。



すとん、と椅子に座って、ひとくち口に入れる。



「…美味しい。」



…こういうの、初めて食べたかも。



黙々と食べ進めていると、鈴丸があくびをしながら現れた。



「おは、よー恭平さん。」


「はよ。よく眠れたみたいだな。」


「ん…。」



半分眠っているような様子で席に着く。



「野菜ジュース飲む?」


「飲む…。」



直季がコップにオレンジ色のジュースを注ぐ。



「ほら急がないと学校遅れるよ。」


「大丈夫だよ…ここ、前のおうちより学校に近いし…。」



口を尖らせる鈴丸に世話を焼く直季。



「恭平もさっさと食べる。片付かないでしょ?」


「お、おう。」



突然自分の方に直季の目線が向いたことに驚きながら恭平も急いで食べる。



「ごちそうさまー!」



食べているうちに目が覚めたらしい鈴丸が歯磨きをしに洗面所に向かう。



「さて、あたしもごはん…ん?何?」



恭平の視線に気づいた直季が顔を上げる。



「いや…いつもこうなのかと思って。」


「こうって?」


「朝ごはん作ったりとか、鈴丸を起こしたり、そういうの。」


「…?母親なんだから当たり前でしょ。」



言ってる意味がわからないというように直季が首を傾げる。



「ん、いや。そっか。」



直季から目をそらし、食事を終えた。



「食器は流しに置いておいて。」


「ん。」


「行ってきまーす!」


「いってらっしゃい!気をつけてね。」


「うん!」



鈴丸に手を振る。



…なんか、主婦ってすげーな。



「恭平もそろそろ着替えないとまずいんじゃない?」


「あ、ああ。そうだな。」



こういう風に、世話を焼かれるのも初めてだから、少し…緊張してるな、俺。



自覚して、なるべくいつも通りになるよう努める。



「…毎回思うんだけどさ、あんた髪セットしてないとかなり幼くなるよね。」


「うっわお前人のコンプレックスを…。」



今更だが顔を隠し、ぱたぱたと部屋に駆け込んだ。



「あはは!そんな気にすることないのにー!」


「うるせー。」



スーツに着替えてからワックスで髪を立たせる。



よしこれでおっけー。



「じゃあそろそろ行くわ。」


「いってらっしゃい。」


「…おう。」



直季にひらひらと手を振って家を出た。