「あ、ちょうど終わった?」


「!」



ビクッとして後ろを振り返ると、上半身裸の恭平がいた。



「う、うん、ありがと。」



慌てて立ち上がり、場所を空ける。



「いちいちありがとう言わなくていいって。もうお前の家でもあるんだから。」


「う…ん。」



眉間にシワを寄せた恭平から目を逸らす。



「…なに?どした?」



それに目ざとく気づいた恭平が直季のほうに向き直る。



「い、いやその…。」


「ん?」



右手首を左手で掴んで、恭平をちらりと見る。



「………かな、って。」


「は?」



決死の思いで呟いた声は小さすぎて恭平の耳には届かなかった。



「ごめん聞こえなかった。なに?」


「だ…から…その…す、するの、かなって…。」


「するって…」



あぁ…なるほど。



ドライヤーをおいて、ゆっくりと直季に近づく。



「きょ、恭平…。」



後ずさりする直季の肩をとんっと押すと、うまい具合にベッドにダイブした。



「っ!」


「こういうこと?」



直季の顔の横に両手をついて直季を見下ろした。



「きょう、へい…。」



直季が恭平の胸を押す。



それを無視してすっと顔を近づけ、耳元に囁いた。



「…なんて、ね。」


「え…?」


「俺がお前に手ぇ出すわけねぇだろ。ちょっとは頭使え。」


「は、はあ!?」



…大体、そんな怯えてるやつに手なんか出せるわけないだろ。



「俺がお前の身体目当てに結婚したとでも思ったのか?お前にそんな色気あるわけねーだろ。」


「なっ…!!も、もういい!恭平のばーか!」


「ガキかよ!?」



でも…。


…安心した。



恭平がそんなやつじゃないってことはわかってたけど…。



それが確認できて、よかった。



「あ、そうだ、お前毎週火曜日暇だよな?」


「定休日だけど暇ってわけじゃ…。」


「じゃあ再来週火曜日の夜、親に会いにいくから空けといて。」


「え、ええ!?そんな、だってなんの用意も…」


「あー服とか靴は俺が用意しとくから。ぶっちゃけついて来てくれるだけでいいよ。」



そんな適当な…。



「あ、でも一緒に住んでるってことはまだ内緒にしといて。そういうのうるさい人達だから。」


「う…うん…。」


「よし。」



ドライヤーを元の位置に戻して、もそもそと服を着る。



「寝るぞ。」


「ん…。」



普段一人で寝ていたベッドが、直季が入ってきたことで少し狭く感じる。



「ってうわ!お前足冷た!」


「え?そう?」


「なんで風呂入ったのにそんなに冷えてんだよ!」



目の覚めるような冷たさに飛び起きる。



「お前やっぱ不健康!」


「大袈裟な…。冷え性なだけ。」


「その冷えがよくねぇんだってば。」



ため息をついてぐいっと直季の体を引き寄せる。



「くっついてたらあったかくなるだろ。」


「…ん…。」



体が温まったことによって一気に眠くなった直季が小さくあくびをする。



「…おやすみ。」


「おやすみ。」



電気を消して、眠りについた。